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東京地方裁判所 昭和50年(特わ)2342号 判決 1975年12月26日

本店所在地

東京都中央区銀座四丁目八番一三号

株式会社桜ゴルフ

(右代表者代表取締役佐川八重子)

本籍

千葉県山武郡松尾町金尾四五二番地の一

住居

東京都千代田区内幸町一丁目一番一号

帝国ホテル一、二八五号

会社役員

佐川八重子

昭和一九年一月二八日生

右両名に対する各法人税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官神宮寿雄出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告法人株式会社桜ゴルフを罰金七五〇万円に、被告人佐川八重子を懲役八月に各処する。

被告人佐川八重子に対し、この裁判の確定した日から二年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告法人株式会社桜ゴルフは、東京都中央区銀座四丁目八番一三号(昭和四八年五月一六日同都中央区銀座三丁目八番一六号から現在地に移転)に本店を置き、ゴルフ場会員権売買等を営業目的とする資本金一〇〇〇万円の株式会社であり、被告人佐川八重子は、右被告法人の代表取締役として同会社の業務全般を統括掌理しているものであるが、被告人は、同会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、二重帳簿を作成し、売上の一部を除外して簿外預金を設定するなどの方法により所得を秘匿したうえ

第一  昭和四七年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における同会社の実際所得金額が九七八八万二五六八円あつたのにかかわらず、昭和四八年二月二八日東京都中央区新富二丁目六番一号所在の所轄京橋税務署において、同税務署長に対し、所得金額が三八九二万六七七〇円でこれに対する法人税額が一三二〇万八七〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同会社の右事業年度の正規の法人税額三四八五万七四〇〇円と右申告税額との差額二一六四万八七〇〇円を免れ(修正損益計算書および税額計算書は別紙(一)(三)のとおり)

第二  昭和四八年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における同会社の実際所得金額が三〇一六万四二七一円あつたのにかかわらず、昭和四九年二月二八日前記京橋税務署において、同税務署長に対し、欠損金額が八〇九万一六三九円で納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同会社の右事業年度の正規の法人税額一〇七九万四一〇〇円を免れ(修正損益計算書および税額計算書は別紙(二)(三)のとおり)たものである。

(証拠の標目)

判示全般の事実につき

一  被告人の検察官に対する供述調書

一  被告人の収税官吏に対する昭和五〇年五月二七日付、六月一四日付、六月二三日付各質問てん末書

一  戸田恵智子の検察官に対する供述調書

一  登記官作成の登記簿謄本

一  京橋税務署長作成の証明書

一  押収してある総勘定元帳二綴(当庁昭和五〇年押第二、一四四号の一、二) 法人税確定申告書二袋(同押号の三、四)

各勘定科目につき

一  宮光角五郎作成の「(株)桜ゴルフの四七年一二期決算書について」と題する上申書

(別紙(一)の番号<1>手数料収入につき)

一  大蔵事務官作成の売上、仕入調査書

(別紙(一)の番号<2>商品売上高、別紙(二)の番号<1>商品売上高、各番号<4>当期仕入高につき)

一  大蔵事務官作成の商品調査書

(別紙(一)、(二)の各番号<5>期末商品たな卸高につき)

一  大蔵事務官作成の給料調査書

(別紙(一)、(二)の各番号<6>給料につき)

一  大蔵事務官作成の租税公課(事業税)調査書および被告人作成の昭和五〇年九月一〇日付上申書

(別紙(一)、(二)の各番号<11>租税公課につき)

一  大蔵事務官作成の交際接待費調査書

(別紙(一)の各番号<16>交際接待費につき)

一  大蔵事務官作成の福利厚生費調査書

(別紙(一)の番号<17>福利厚生費につき)

一  大蔵事務官作成の雑費調査書

(別紙(一)の番号<22>雑費につき)

一  大蔵事務官作成の支払手数料調査書

(別紙(一)の番号<23>支払手数料、別紙(二)の番号<19>支払手数料につき)

一  大蔵事務官作成の受取利息調査書および預金等利息調査書

(法人分)

(別紙(一)の番号<24>受取利息、別紙(二)の番号<25>受取利息、<26>雑収入、<32>未収利息当期認容額につき)

一  大蔵事務官作成の「交際費等の損金算入額の計算(措法六二)」と題する書面

(別紙(一)の番号<32>交際費損金不算入額につき)

(法令の適用)

1  該当罰条と刑種の選択

被告法人株式会社桜ゴルフ(以下被告会社という)の判示第一、第二の各所為-各法人税法一六四条一項、一五九条

被告人の判示第一、第二の各所為-各法人税法一五九条(いずれも懲役刑選択)

2  併合加重

被告会社-刑法四八条二項

被告人-刑法四五条前段、四七条本文、一〇(犯情の重い判示第一の罪の刑に加重)

3  執行猶予

被告人-刑法二五条一項

(情状について)

被告人が被告会社の業務に関し行なつた本件脱税行為は、ゴルフ会員権の売買を証明する整理カードを公表分と公表外分に区別して、公表分のみに基き総勘定元帳を作成し、仕入、経費等も圧縮する方法によるもので、その結果の脱税額も必ずしも少額とはいえないが、急激に成長した会社であつて、従前は経理を十分に行なう体制になかつたところ被告人は本件摘発を機会に健全な経営を期することを誓い、脱税額についても修正申告によつて二〇〇〇万円余をすでに納め、その余についても分納手続により完納する予定であること、留保した所得を個人的に費消した形跡もないこと等諸般の情状を考慮して主文のとおり量刑した次第である。

(裁判官 安原浩)

別表(一)

修正損益計算書

株式会社 桜ゴルフ

自 昭和47年1月1日

至 昭和47年12月31日

No.

<省略>

<省略>

別紙(二)

修正損益計算書

株式会社 桜ゴルフ

自 昭和48年1月1日

至 昭和48年12月31日

No.

<省略>

<省略>

別紙(三)

税額計算書

株式会社桜ゴルフ

<省略>

<省略>

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